スライドグリスのお話



皆さんこんばんは!
今日はスライドグリスについて。
以前にも何度かお手入れに関するブログを書いていて、そこでもスライドグリスについて触れていますが、今回はもう少しだけ詳しく、それぞれの違いなどについても書いていきたいと思います。



◆スライドグリスの選び方

スライドグリスを選ぶ基準としては、
管の摩耗具合(クリアランス)
音色
に大別して考えられます。

まず最初、管の摩耗具合。
買ったばかりでピカピカの楽器や、使い始めてそんなに年月が経っていない楽器の場合はここはあまり気にしなくて大丈夫。
十数年、もしくは何十年以上使われている楽器や、中古で購入した楽器はこの摩耗具合とまず相談してどのグリスにするか決めるのが望ましいです。
そもそも抜差管のグリスを塗る部分は水抜きやチューニング等で、常に管同士で擦り合っている状態が発生しているのでどんなに気をつけていても経年でクリアランス(すき間)が大きくなり気密性が薄くなります。

クリアランスが大きいとそれだけ抜差管が落下するリスクが高くなります。ちょっと楽器に吹きこんだ息圧でポーーンと飛んでいってしまう可能性があるのです。そうでなくとも楽器を構えている際は第1〜第3抜差管は重力でゆるゆると下に抜けていき、最終的には「カーーンッ」という悲痛な音とともに落下して管も心も凹んでしまいます…(まあその前にピッチがおかしくなってくるのでそこで気づければ防げますがそこからは落下との闘いになって演奏どころじゃなくなります)

また、気密性が薄くなると吹き込んだ息がわずかながらですが隙間から漏れ出ることになり、ベルまでフルパワーで届かなくなるため吹奏感に影響が出ます。特に高音域になってくると影響が顕著になってくると思います(個人の経験より)。
こうなると良くないことだらけですので、粘度が高く抜差管をしっかりキープできるハードタイプのグリスを第一選択肢として入れましょう。

また、たまに新品の楽器で見かける事があるのですが上記とは逆に、管どうしが密着しすぎて抜差しがスムーズにできない場合があります。その時は柔らかめのグリスを塗ることである程度緩和できます。


次に音色で考えるとき。
後ほどご紹介しますがグリスにも様々な種類があり、中学校で買うアルトリコーダーに付いていたような指で塗るタイプから、手を汚さないジェルタイプまであります。それぞれで粘度や伸びが異なり、また固形寄りかジェル寄りかで振動の伝わり方も変わってくるので、そういうところで吹奏感・音色に変化が生じてきます。
グリスは基本的には抜差管からサビや摩耗を保護するのが目的のため、音色や吹奏感まで商品説明で言及しているものはあまり多くありません。しかしマウスピースと同じように吹く人と楽器の相性が少なからず存在するので、自分が吹きやすいと感じたグリスにすれば、演奏が楽になる可能性があります。(もちろん練習はしっかりと!!あくまで補助的な意味です)


では、実際に種類を見ていきましょう。




◆グリスの種類・粘度について

・固形タイプ
例:ヤマハ、シルキー、ラ・トロンバ、アイルリッヒ、ウルトラピュア、ヘットマン(スライドグリス8番)、ルーカス等


基本的に指もしくは楽器を傷つけない棒などで掬って塗りつけるタイプです。
テクスチャー(質感)はクリーム状のものから硬めのものまで様々です(粘度とはまた異なります)。ジェルタイプより歴史が長いので色んなメーカーが出しています。
一般的にハードと呼ばれるものは指につくと糸を引くくらい粘度が高く、スーパーハード、ウルトラハード(ヘアワックスみたい…)になると接着剤と見紛うくらい強力です。
例外としてヤマハとウルトラピュアはスティックタイプも販売しており、一般的なリップクリームと見た目が似ています。そしてやはりリップのように下の方をグリグリ回すことで中身が出てきて、手を汚さずに塗ることができます。


・ジェルタイプ
例:ヤマハ(スラアイドグリスジェル)、バック(旧セルマー)、ヘットマン(スライドジェル7番、スライドジェルプラス7.5番)


その見た目通り、液状タイプのグリスです。こちらも粘度は様々ですが、固形タイプと比べて伸びがいいものが多く、管の抜差しもしやすいのが特徴。ただその分オイルや水分で取れてしまうのが早いことも…
先端がノズル状になっているものが多く、細かいところ(管が隣り合っているところなど)も塗りやすいです。


・粘度について
先ほどからチラホラ出てきている粘度という言葉。この粘度が高いほど密着度があり少ない量でも管のクリアランスを埋めてくれます。

今僕の手元には、
・ヤマハ  ウルトラハード
・シルキー
・ラ・トロンバ
・ウルトラピュア
・バック
・ヘットマン(7、7.5)
があるのですが、ヘットマンの7番を除いて個人的所感で粘度順に並べてみました↓





ヘットマンの7.5も結構粘度高くて指同士くっつきそうになるんですが、ヤマハのウルトラハードは群を抜いてます。ガチでヤバい。紙どうしの接着とかなら全然いけそうって感じです。(想定される使い方ではないのでやめておきましょう)

画像にないヘットマンスライドジェル7番ですが、こちらも使ったことがあるのですが結構粘度低かったです。ウルトラピュアとアイルリッヒの間か、アイルリッヒよりも低いかもしれません。


また、粘度が低いグリスは塗った後の抜差しがスムーズになりますが、割とオイルや水分等ですぐに流されてしまうので頻繁に塗り替えないといけない手間があります。逆に粘度が高いものの持ちが良く比較的塗り替えスパンが長く取れますが、空気中のゴミが抜差管に付着しやすくなるのと塗り替えるときに拭き取りが面倒なのでそれぞれ一長一短があります。




◆現在使用しているグリス


僕が現在使っているのは、上の画像の「バック」と「ヘットマン7.5」です。
2つを3:1ぐらいの割合で混ぜて使っています。


以前はバック単体で使っていたのですが、パイパーズでホルンのグリス特集があった時に管によってグリスを塗り分けるという概念に出会ったのでそこからはFチューニング管だけシルキーを塗っていました。シルキーはパイパーズでも紹介されてたように低音域の反応が良くてF管にピッタリでした。

ただ、バックの方が使い始めた当初バランスは良かったんですが、ここ最近クリアランスが埋まりきっていないなーと感じていました。そこでヘットマンの7.5を導入したのですが、コレを管全体に塗るとそれはそれでキツいなーと感じてしまい、結果先さっきの割合でハイブリッドで使っているというわけです。
Fチューニング管もこの時にバック+ヘットマンにしましたが、こちらも特段の差は感じず良好です。


ちなみにメインチューニング管だけアイルリッヒにしていた時期もありました。軽めの吹き心地で高音域の反応が良かったのですが、安定しにくいことと割と頻繁に塗り替えないといけないのがネックでやめました。




◆グリスについての注意点

まずグリスを塗る時ですが、塗る前に管に付いている古いグリスをしっかり拭き取りましょう!!ヤマハから出ているオイルグリスクリーナーを使えば比較的容易に取ることができます。個人的には必須アイテムだと思っています。

また、楽器側の抜差外管の内側にもグリスが残っているので、クリーニングロッドにガーゼを巻きつけたもので拭い取りましょう。古いグリスが残ったままだと塗り替えた際にロータリー側に入っていってしまう可能性があり、そうなるとロータリーの動きに影響が出てしまいますので必ず拭き取るようにしましょう。

塗りすぎ・塗らなさすぎどちらも✖️です。塗りすぎに関しては個人差があるので一律の基準があるわけではありませんが、吹いてみた時にモーーーといった膜が張ったような音の場合は大体塗りすぎかと思います。
塗るときは管の先端から3〜5mmほど離れた位置から1〜1.5cm程の長さ(範囲?)に伸ばして周囲に塗り広げた後、本体に戻して何度かスライドして往復させて馴染ませます。その際はみでたグリスは拭き取りましょう。

あと、外で長時間吹いたあとは帰ったその日のうちにグリスを塗り替えるのが望ましいです。川辺で吹くというのはする人が多いと思いますが、無風ならまだしも風が少しでも吹いていれば細かい塵やゴミ、砂などが抜差管の出ているところに付着します。それを拭き取らずにその後も拭き続けているとガリガリと管を削ってしまうことになり(ここまでの音は鳴りませんが、シャリシャリとなら経験ある人いるはず)結果抜差管の摩耗を早めてしまいます。また、その付着物がロータリーの中に侵入すると中で詰まったりロータリー本体を傷つけたりする可能性がありそれこそ大問題です。面倒かもしれませんが楽器の寿命を伸ばすためだと思ってぜひやってください。



たかがグリス、されどグリス。
ぜひ皆さんも色んなタイプのグリスを試してみてくださいね!


それでは。






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